鍼灸師として

皆さんの中に、鍼(はり)治療に関心がある人もいるでしょう。実際、ケガからの回復過程や筋肉のコンディショニングに鍼を活用するアスリーツは多くいます。鍼を経験したことのない人は、「痛いのではないか」と心配するケースが多いようです。しかし、鍼は基本的に痛くないと思っていただいて良いと思います。ただし、ケガの状況によっては稀に、あえて痛みの出る手法を使うことがありますが、初心者ではそれはほとんどありません。

鍼は、よく活用されるものとして、刺してすぐ抜く「単差し」、刺したまま10〜15分程度置く「置鍼」、刺した鍼に低周波の電流を流して筋肉の血行促進をはかる「パルス鍼」などがあります。これらの手法が、患者の症状によって使い分けられます。また、同じ患者でも、症状の改善に従って鍼が使い分けられます。

鍼は、血行を促進したり、体の中のエネルギーの流れである「気」のバランスを整えたりすることで体に起きているアンバランスを整えます。これが、鍼を刺すという刺激で行われるのですから、刺激の量が重要になります。鍼治療では一回で症状が良くなる人もたくさんいます。しかし、基本的には劇的に症状を和らげるような治療はしません。体にムリなく、徐々に効果を出すように治療されます。

時々、鍼にマジックのような速効効果だけを求める方がいます。そして、そういう方はすぐに効果がでないので「自分には合わない」「効かない」と思ってしまうようです。しかしそれは勘違いで、鍼は継続的な利用が重要であることを忘れないでほしいと思います。

灸(きゅう)治療も、なにやら取っ付きにくいものと思われるでしょう。しかし灸は、痛みに対してとても高い効果を発揮します。灸にもさまざまな種類がありますが、通常の治療で使われる灸は「温灸」といって直接皮膚に艾(もぐさ)を乗せず、間接的に熱を伝える手法です。火を使うので多少は熱く感じますが、ヤケドをするような心配はまったくありません。